首页 > 文学.小说 > 人面疮TXT下载

人面疮

作者:横溝正史(日)
栏目:文学.小说
类别:
大小:544KB
评价星级:★★★★☆
下载次数:(本周:,本月:)
在线阅读  点击下载

书籍节选

书籍章节作者介绍
ちかごろは凶悪な犯罪や陰惨な事件がつぎからつぎへと起こって、ほとんど応接のいとまもないくらいだが、これからお話しようとする「|睡《ねむ》れる花嫁」の事件ときたら、その陰虐さにおいて比類がなく、この事件の真相が究明されたときには、さすがに大犯罪や怪事件に|麻《ま》|痺《ひ》した都会人も、あっとばかりに|肝《きも》をつぶしたものである。
 それは凶悪であるばかりでなく陰惨であった。陰惨であるばかりでなく不潔であった。しかもあいついで起こった陰惨にして凶悪、凶悪にして不潔な「睡れる花嫁」事件の底には、ほとんど常識では考えもおよばぬような、犯人のゆがんだ|狡《こう》|智《ち》と計画がひそんでいたのだ。
 さて、それらの事件の露頭がはじめて顔を出したのは、昭和二十七年十一月五日の夜のことだったが、その|顛《てん》|末《まつ》というのはこうである。
 その夜十一時ごろ、S警察署管内にあるT派出所づめのパトロール、山内巡査は受持区域を巡回すべく、十一時ごろ、同僚の石川巡査と交替で派出所を出ていった。
 人間の運命ほどわからないものはなく、これが生きている山内巡査を見る最後になろうとは、石川巡査も気がつかず、また、当の本人、山内巡査も神ならぬ身の知るよしもなかった。
 しかし、あとから思えば虫が知らせたというのか、山内巡査は出るまえに、石川巡査とこんな会話をかわしたそうだ。
「いやだなあ。また、あのアトリエのそばを通らねばならんのか。おれゃ、あのアトリエのそばを通るとき、いつもゾーッと総毛立つような気がするんだ」
「あっはっは、そんな|臆病《おくびょう》なことをいってちゃ、この職業は一日もつとまらない」
「いや、おれ自身、そんな臆病な人間とは思っちゃいない。巡回区域のなかにゃ、もっともっと|淋《さび》しいところもあるんだが、あのアトリエだけは苦手だな。いまいましい、どうしてはやくぶっこわしてしまわないのかな」
「そんなことをいったって、持ち主の都合もあるんだろう。まあいいからはやくいってきたまえ。いやな仕事を片付けて、あとで何かあったかいものでもおごろうじゃないか」
「ふむ、そうしよう、じゃ、いってくるよ」
 そうして山内巡査は出かけたのだが、それきり生きてふたたび、派出所へ帰ってくることはなかったのである。
 いったい、S警察署のあるS町というのは郊外のそうとう高級な住宅街で、やたらに樹木が多く、夜などたいへん|淋《さび》しい町だ。しかも、そこにはS学園という、幼稚園から大学まで包括する大きな学校もあり、昼間の人口と夜の人口とのあいだに、そうとうのひらきがあるといわれるくらい、夜ともなれば静かなところである。
 おまけに、山内巡査の受持区域というのが、S学園からS町のはずれへかけての、この町でもいちばん淋しい区画だ。山内巡査はこの区域を、いつもあんまり好んでいなかったが、夜のパトロールのときはことにいやだった。
 それというのが、さっき石川巡査とのあいだに話が出た、あのアトリエのことがあるからだった。そのアトリエというのは、S学園の建物を通りすぎて、人家もまばらな畑地ヘさしかかると間もなく、向こうに見えてくるのである。
 それはもう長く住むひともなく、荒れるにまかせてあるうえに、いちばん近い隣家からでも、百メートル以上も離れており、おまけに|亭《てい》|々《てい》たる杉木立にとり囲まれて、めったに陽のさすこともなく、昼間見ても、ゾーッと総毛立つほど陰気で、いかにも|曰《いわ》くありそうな建物なのだ。
 しかも、じっさいそのアトリエには、世にも陰惨な歴史があるのだ。
 それはまだ山内巡査がこの土地を知らないまえの出来事だったが、いつか同僚の石川巡査から聞かされた、その陰惨なエピソードの記憶が、夜の巡回の途次など、ことになまなましく|脳《のう》|裡《り》によみがえってくるのだ。
 それはいまから数年まえの出来事だった。
 当事、そのアトリエには|樋《ひ》|口《ぐち》|邦《くに》|彦《ひこ》という画家が、細君とふたりきりで住んでいた。樋口邦彦というのは、その当時の年齢で、四十近かったそうだが、それに反して、細君の|瞳《ひとみ》というのは、まだ若い、しかし病身そうな女であった。
 じっさい、瞳は肺をわずらっていたのだ。彼女はそれより一年ほどまえまで、銀座裏のキャバレーで、ダンサーとして働いていたところを、樋口邦彦と相知って、|同《どう》|棲《せい》することになったのだが、キャバレーにいるころから、ときどき|喀《かっ》|血《けつ》していたという。
 しかも、その病勢は樋口と同棲することによって、快方に向かうどころか、いっそう|昂《こう》|進《しん》していった形跡がある。げんに瞳がそのアトリエに住むようになって以来、定期的に診察していた医者は、ふたりに別居するようにと、|切《せつ》にすすめたそうである。彼らの異様な愛欲生活が、女の病勢をつのらせていることが、はっきりわかっていたからだ。
 しかし、瞳は笑ってとりあわず、樋口も彼女を手離さなかった。
 変わり者の樋口は、近所づきあいというものをほとんどやらなかったが、それでもご用聞きやなにかの口からもれて、彼の瞳にたいする熱愛ぶりは、近所でも知らぬものはなかった。
 それは瞳の病勢が、いよいよつのってきた八月ごろのことである。
下载地址: 点击下载TXT
更多>>

本栏下载排行

更多>>

相关下载